そんな時代に必須な「筋活」、筋肉を維持する、育てる「食事版」についてです。
栄養学を学ぶと、とにかく「たんぱく質」の重要性を叩き込まれます。
特に日本は、たんぱく質が足りなくて感染症や、血管が弱くて切れてしまうような疾患が多かった歴史だからですね。
今はこれまた事情がちょっと異なって、30代以降、年に1%ずつ減少していく「筋肉」をいかに維持するか、が危機として言われています。
理由は、人生が長くなったから。
人生後半は「筋肉」で、人生が救われるかもしれません!
「筋活をしなくては」と思える今どきの事情
大腿四頭筋(太もも)にいたっては、60歳で25歳時の約60%まで落ちるというデータもある
「筋力が低下するとこうなるからダメなのよ」、と言われていることをまとめますね。
- 基礎代謝低下による、体重(体脂肪)の増加
- 体重(体脂肪)増加による、関節への負担、「ロコモティブシンドローム」リスク
- 体重(体脂肪)増加による「メタボリックシンドローム」から「生活習慣病」発症リスク
- 耐糖能(血糖値コントロール)の悪化、「糖尿病」発症のリスク
- 「認知症」「うつ病」発症リスク
- 「サルコペニア」「フレイル」のリスク
もともと言われてきたのですが、どんどん長寿化しているので、ますます言われるようになりました。
「運動器症候群」、通称「ロコモ」
筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、立ったり歩いたりすることが困難になっている状態
日常生活に支障をきたす、将来寝たきりになるリスクがある
「内臓脂肪症候群」、通称「メタボ」
動脈硬化を促進させ、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性が高まる
- 内臓脂肪が多い(腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上)
- さらに、「高血糖」「高脂質」「高血圧」2つ以上が該当
1つでも該当する場合は予備軍
「高血糖」:空腹時血糖110mg/dl以上
「高脂質」:中性脂肪150ml/dl または HDLコレステロール40mg/dl以下
「高血圧」:収縮期血圧130mmHg以上 または 拡張期血圧85mmHg以上
- 「筋肉」はブドウ糖を取り込み、血糖をコントロールする働きをしている
1日に摂取する「糖」のうち、7割以上を消費する
(グリコーゲンとして貯蔵する) - 活動量の低下や運動不足が続くと、ブドウ糖の取り込み能力が低下し、インスリン抵抗性(※)の原因となる
(※)インスリンの効きが悪くこと。インスリンが分泌されていても、受け取りての感受性が低下し、インスリンを使いきれなくなる状態
- 筋トレをすると、脳内に「インスリン様成長因子(IGF-1)」が生成される
- 「インスリン様成長因子(IGF-1)」は、筋肉の成長を促す物質であり、アルツハイマー型認知症の原因となる脳内の「アミロイドベーター」というたんぱく質を減少させる
- 筋肉を動かし続けると、脳内の神経細胞からの情報伝達が「運動神経」→「感覚神経」→「運動神経」→「感覚神経」と繰り返し行われることから、脳トレになる
- 有酸素運動で血液中の酸素が満たされると、脳にも流れ込み、脳の神経細胞の活動性が向上、細胞間のネットワークが密になり、脳パフォーマンスが向上、認知症リスクが軽減する
- 「サルコペニア」は、全身の筋力低下が起こること、身体機能の低下が起こること
歩くスピードが遅くなる、杖や手すりが必要になるなど - 「フレイル」は「虚弱」という意味で、加齢とともに心身の活力(筋力や認知機能など)が低下した状態
健康と介護の中間の状態
学術的にはこのようなことがわかっているのですが、けっこうな筋トレ好きの私の体験談も記載しておきますね( ´艸`)
- 体温があがる(生姜の比じゃない。1℃はあがった)
- 疲れにくい(これは有酸素運動の効果も大きいかも)
- 姿勢が保てる(姿勢を保つには筋力が必要だった)
- 家事や活動が楽(とにかく家事は圧倒的に楽になった)
- 関節が守られて痛めにくい
- なんでも「どんとこい」と思えるようになる
- 筋トレをするたびにドーパミン(快楽ホルモン)が分泌するのがわかるようになる
さまざまな病気予防という側面はもちろんのこと、あれこれ乗り越えられそうな、強くなったような気がするようになります、笑。
筋肉は、負荷をかければかけるほどに大きく育っていきますが、今回は筋肉づくりのベースとなる食事について。
十分にたんぱく質が摂取できていると、同じ負荷でも筋肉を維持しやすくなる。
これが、食事版「筋活」が重要な理由です。
「たんぱく質」、必要な量はどれくらい?
日本食事摂取基準2020年版(厚生労働省)で示されている、1日のたんぱく質摂取量について。
「たんぱく質」や「エネルギー摂取目標量」は、「年齢」と「身体活動レベル」別で示されています。
Ⅰ(低い)
生活の大部分が座位(座る)で、静的な活動が中心
Ⅱ(ふつう)
座位中心の仕事だが、職場内での移動や立ち位での作業・接客等、あるいは通勤・買い物・家事・軽いスポーツ等のいずれかを含む
Ⅲ(高い)
移動や立位の多い仕事への従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている
Ⅰ(低い)は、疾患などをもっていて安静が必要な方を除き、人生100年時代にあってはならないライフスタイル!
ということで、ⅡとⅢの摂取目標量について。
摂取上限については策定されていません(明確な根拠になる研究などがないためとのこと)。
ただし、過剰摂取に関係が深いと考えられているのは「腎機能への影響」と記載されています。
- 2.4g×体重(kg)以上たんぱく質を摂っても、それ以上のたんぱく質合成は見られない
- 「糖代謝機能改善」においては、低たんぱく質摂取の方がよいという研究もある
*「スポーツ栄養学」(寺田新 著/東京大学出版会)より
例えば、私は身体活動レベルはⅢ(最近はⅡかな・・・( ;∀;))、51歳なので、79~113g/日が摂取目標量。
スポーツ栄養的にたんぱく質合成最大を狙う場合は、
2.4g×47kg=112.8g/日
ちゃんと食事摂取基準の枠に入っていますね! 「腎臓への影響」というリスクも考慮して、素直に摂取基準値内で1日のたんぱく質摂取量を決めればよさそうです。
腎機能、糖代謝機能に心配がある方は、たんぱく質は低い方の基準値をとった方がよいかもしれませんね。
※治療中の方は、ドクターにご相談ください。
1日に、何をどれくらい食べればいい?
「たんぱく質」食べ方の基本
1食で吸収されるたんぱく質は20g程度
つまり、たんぱく質摂取目標量が多い場合は、「食事3食」+「間食」でたんぱく質摂取が望ましいということになりますね。
「たんぱく質」アミノ酸スコアについて
ヒトは食材から「たんぱく質」を摂取したら「消化」して「アミノ酸に分解」し、筋肉やカラダの組織に組み立て直している
さて、私たちがアミノ酸を使って筋肉などをつくろうとする際には「必須アミノ酸」9種類がまんべんなく摂れている必要があります。
何か1つでもアミノ酸が足りないと、そのレベルまでしか使えないのです。
上図の左側のように、すべてのアミノ酸が含まれている食材が「アミノ酸スコア」100の食材。
いわゆる「良質なたんぱく質」といわれます。
肉類、魚介類、大豆・大豆製品、卵、乳製品など
ちなみに他の食材のアミノ酸スコア例は、精白米(61)、ジャガイモ(73)、キャベツ(53)、トマト(51)。
穀物や野菜にもたんぱく質は含まれますが、アミノ酸スコアが低くなるのですね。
食材のざっくり構成
関連記事で「日常食」として例をあげた献立の場合(※)、米や野菜などからたんぱく質25~30gが摂れます。
(※)主食が白米の場合、主菜(メインディッシュ)1品、野菜スープ、副菜2品
1日80g/日を摂取目標とする場合
80-25=55gを「良質なたんぱく質」から摂取する。
パターン1:朝食15g、昼食20g、夕食20g
パターン2:朝食10g、昼食15g、間食5g、夕食20g
摂取したいたんぱく質量(g)-25(g)
※25gは、穀物、野菜など他の食材から摂取していると想定したたんぱく質量
各食品によって含まれるたんぱく質量は異なりますが、ざっくりと、平均的な1食分のたんぱく質量をまとめます。
どれくらい食べたらよいかの目安にされてくださね。
- 肉・魚貝類(主菜1食100g):たんぱく質20g前後
- 納豆(2パック):たんぱく質15g前後
- 木綿豆腐(1/2丁150g):たんぱく質10.5g前後
- 卵(1個):たんぱく質6g前後
- プロセスチーズ(1個):たんぱく質2.5g前後
- 蒸し(水煮)大豆(一握り50g):たんぱく質8g前後
アブラ(脂肪酸)についてもまとめているので、ぜひ併せてご参照ください。
本記事最後に、添付しておきますね(^_-)-☆
『食⑧【徹底解説】現代病予防に必須『アブラコントロール』の習慣化術』
市販のプロテインについて、よくご質問いただきます。
大前提は他のサプリメント類もそうですが、「食」に勝るものなし。
ですが、上手に活用されてよいのではないでしょうか。
スポーツの際には糖分も重要な栄養素となるので糖分も必須
筋肉を大きくしたい際も、たんぱく質+糖分の方が大きくなる
いわゆる「ポカリスエット」などと一緒で、スポーツないし運動等に適した商品については、日常的に飲用していると糖分摂り過ぎの可能性、あるいは血糖値の急激なアップダウンにつながるので、要注意です。
では糖類ゼロや低カロリーがよい?
糖類ゼロ・低カロリーなどを謳う際に用いる代替糖類は、砂糖よりもさらに「耐糖能(血糖値をコントロールするチカラ)」によくない(悪くする)という研究もありますので、あくまでも「摂り過ぎ」にはご注意くださいね。
私?
筋トレ後はいわゆる「プロテイン」でタンパク質を15~20g摂取、走るときはVAAM(脂肪燃焼)です( ´艸`)
まとめ
✐30代以降、年に1%ずつ筋肉は減少する
✐筋力が低下するとさまざまな病気と老化のリスクがあがる
・基礎代謝低下による、体重(体脂肪)の増加
・体重(体脂肪)増加による、関節への負担、「ロコモティブシンドローム」リスク
・体重(体脂肪)増加による「メタボリックシンドローム」から「生活習慣病」発症リスク
・耐糖能(血糖値コントロール)の悪化、「糖尿病」発症のリスク
・「認知症」「うつ病」発症リスク(運動不足による筋力低下)
・「サルコペニア」「フレイル」のリスク
✐筋肉をつけると病気リスク低下だけではなく、ポジティブなメリットも多い
・体温があがる、疲れにくい、姿勢が保てる、家事や活動が楽、関節が守られて痛めにくい
✐どんなに筋トレしても、筋肉になる材料「たんぱく質」がないと筋肉にはならない
・1食で吸収されるたんぱく質は20g程度、各食事または間食で摂る
・カラダの中でつくられず食材から摂取しなければならない9種類のアミン酸バランスがよい「良質なたんぱく質」を「たんぱく質の目標摂取量ー25g(※)」をめやすに摂取する
(※)穀類や野菜類から摂れているであろうたんぱく質量(/日)
菜食(ベジタリアン)の方が調子がよいという方もいらっしゃいます。
「嗜好」は各種消化酵素の強い・弱いの個性が関わっているのだろうな、と感じています。
ご無理せず! いわゆる「優良なたんぱく質」といわれる食材は、アミノ酸バランスがとりやすいというだけで、それらの食材を食べなければ! というものではありません(^_-)-☆
記事中でご紹介した、アブラ(脂肪酸)についての記事を以下に添付します。併せてぜひ、ご参照ください!
今回は「アブラ」のお話です。「糖質」については、摂取量、そして血糖値が急激にあがらないような食べ方をして「耐糖能」(血糖値をコントロールするチカラ)を守ろう! という記事を書かせていただきました。「アブラ」は、エネルギー(カ[…]
また、次の習慣化でお会いしましょう(^_-)-☆